【読売新聞コラボ企画|新聞で「社会」を知ろう】
役員・部長に若手が「助言」 逆メンター制度

2018/03/20
インタビュー

互いの強みを認め助言し合う関係にある臼田さん(左)と松野さん(神戸市の「P&Gジャパン」本社で)

 読売新聞朝刊生活面の「生活調べ隊」は、世の中の新しいトレンドや暮らしに役立つ情報などをワイド紙面で紹介するコーナー。2018年1月23日には、若手社員の声を生かそうとする企業の動きを取り上げました。(年齢などの情報は掲載時のままです)

 若手社員が抱える課題や悩みの解決を、経験豊かな先輩社員がサポートするメンター制度。最近、二者の立場を逆転させた「リバース(逆)メンター制度」を導入する企業が登場している。社内コミュニケーションの活性化に狙いがあるようだ。(遠藤富美子)

 メンターとは「助言者」の意味。定期的な面談などを通じ、先輩社員が若手社員の相談に乗るのが一般的だ。離職防止や女性社員の人材育成などに効果があるとされ、多くの企業が導入している。

 では、これまでの「先輩」と「若手」の立場が反対になった逆メンター制度には、どのようなメリットがあるのだろう。

ITやトレンドなど 年齢超え交流活発化

 資生堂(本社・東京)は、社員と役員を対象にした逆メンター制度を導入して1年になる。役員から「ITスキルを学ぶ機会がほしい」という声が上がったのがきっかけだった。

 まず、役員が30歳前後の社員約20人をメンターに推薦。事務方が双方の担当分野が異なるようにマッチングする。IT技術を伝えることを基本目的に、月に1、2回、会議室で面談したり、商業施設などへ視察に出向いたりする。メンターの任期は1年間。

 就活メイクなどの講座を企画する部署に所属する中村涼香さん(31)は、マーケティング担当役員のメンターになった。「最初は緊張し、私が教えていいのだろうかと思った」と明かす。

 しかし、面談を重ねるうちに相手の関心分野もわかってきた。社内制度でカナダに1か月の語学留学をした際、ウェブ会議システムを使い、現地で人気のオーガニック化粧品について伝えるなど工夫した。

 「出張先から臨場感のある報告ができるメリットを実感してもらえた。今では、役員が担当する部門内で、ウェブ会議システムがかなり活用されているそうです」と話す。

 逆メンター制度の感想などを役員にアンケートしたところ、「生産性向上につながった」「新しい考え方や常識に触れ、大いに刺激された」などと評価する声が多かったという。

 同制度の運用に携わったIT担当部の越智佑子さん(38)によると、社内専用SNSも現場や出張先でも頻繁に使われるようになり情報共有の速度が向上したという。

 社員が自発的に逆メンターに取り組んでいるケースもある。

 生活用品や化粧品などを手がけるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)・ジャパン(本社・神戸市)の臼田美樹さん(50)もその一人。人事部の部長級の職位にあるが、自分が講師を務めなければならない際などに、研修担当の松野美緒さん(39)に逆メンターになってもらっている。

 元々、臼田さんは松野さんのメンターでもある。臼田さんは「私と松野は、互いにメンターであり逆メンター。研修のエキスパートである彼女に助言を求めるのは自然なこと」と語る。

 逆メンター制度について南山大学の久村(くむら)恵子教授(組織行動論)は、年齢や職位にかかわらず、その分野の熟練者が教える立場になる点に注目する。「ITなど新分野では、社内のエキスパートが若い社員ということはままある。上の世代が教えを請いやすくし、次世代の指導者を育てる仕掛けとして、有効な制度では」と話している。

資生堂のリバースメンター制度

年長者は丁寧に話聞く

 会社や仕事に対する意識は年代によって異なる。世代間のコミュニケーションギャップをどう乗り越えていくかは、古くて新しい問題だ。

 人材サービスのエン・ジャパンが昨年、30歳以上を対象に年下社員との接し方に関する悩みを尋ねたところ、42%が「世代間ギャップを感じる」、36%が「何を話していいかわからない」と回答した。自分の言動がパワーハラスメントにならないか不安を感じている様子も見てとれた。

 世代間ギャップに詳しいリクルートワークス研究所主幹研究員の豊田義博さんは「年配の人は自分の経験に照らして、『やる気がない』といったレッテルを若者に貼ってしまう傾向がある。若者はそうした姿勢の人には社交辞令で話はしても、本音は明かさない」と指摘する。

 コミュニケーションを円滑にするには、相手に対し「優れた能力を持っているのでは」という目線を持ち、丁寧に話を聞く姿勢を示すことだという。10~15分でも時間を作り定期的に話し合うことも有効だ。

 企業における人材開発に詳しい日本マンパワーのソリューション企画部専門部長、水野みちさんは「日本人は責任ある立場になるほど、『知らないことは恥』だと考えてしまいがち。意識を転換させて『知らないということを知っている人こそ賢者』と考えれば、若手社員の声にも耳を傾けやすくなる」とアドバイスする。

年下社員と接する上での悩み

取材を終えて 向き合う時間を

 様々な世代のいる職場は、自分とは異なる考えを持つ人々の宝庫だが、忙しさにかまけていると、じっくり話す時間はあまりない。だが、リクルートワークス研究所の豊田さんが言うように、時間を割いてこそ、コミュニケーションは実のあるものになる。

 今後、IT化がさらに進めば、若い人たちから学ぶことは増えるだろう。40代の私も世代間ギャップを感じる一人だが、違いを認めつつ、しっかりと話に耳を傾けたい。

INFORMATION

 コミュニケーションの大切さが伝わってくる記事でしたね。2018年1月9日付読売新聞朝刊解説面には、コミュニケーション力やコミュニケーション障害について、専門家に意見を聞いた「コミュ障でもいいじゃないか」が掲載されています。図書館などでぜひ手にとって読んでみてください!

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