【読売新聞コラボ企画|新聞で「社会」を知ろう】
IT人材奪い合い 幅広い業種 サービス開発合戦

2018/05/09
インタビュー

 読売新聞の朝刊3面に掲載される「SCANNER(スキャナー)」は、政治、経済、国際ニュースなどを掘り下げ、分析するコーナーです。2017年12月24日には、IT技術者不足の深層に迫りました。

 IT(情報技術)人材の不足が深刻になっている。買い物などのサービスがインターネットで利用できるようになったほか、人工知能(AI)の活用も広がり、幅広い業種の企業が人材獲得に躍起になっている。対策が遅れれば、政府の成長戦略の足かせになりかねない。(経済部 小林泰明、水野翔太)

 「人手不足でプログラムの欠陥を修正できない」
 大手電機メーカーでAIを搭載した機器の開発に携わった技術者は嘆く。開発が進まず、販売開始が1年以上も遅れているという。

 一方、あるIT技術者の男性(31)は「どの企業も技術者が足りない。こちらは選び放題だ」と語る。経済産業省の推計では、IT人材は2020年に約37万人、30年には約79万人も不足する。

IT分野の人材不足は今後深刻化する

〈IT人材〉

 インターネット通販などの業務システムや、家電などに組み込むソフトウェアを開発する人たちが代表的。サイバー攻撃からコンピューターシステムを守る人も含まれる。ビッグデータを分析する専門家や、人工知能(AI)に関連するプログラムをつくる人などは「質」、「量」とも大幅に不足すると見込まれている。

 人材不足は15年頃には顕在化していたが、このところ製造業や金融、流通など、幅広い業界でITを使った新サービスの開発が広がり、拍車がかかっている。ネットで買い物をする人が増え、多くの企業が専用サイトやスマートフォン向けアプリの開発にしのぎを削る。

 コンビニエンスストア業界でも、無人レジの導入などが進む。大手幹部は「AIや(あらゆるモノをネットでつなぐ)IoT、ロボットなどをフル活用して生産性向上に取り組まないと、成長は見込めない」と危機感を示す。

遅れる対策 成長の足かせ懸念

 大企業は、あの手この手で人材確保を急ぐ。富士通は来年2月、ITビジネスに関心を持つ大学生らを対象としたセミナーを開く。アプリ開発の経験があるといった優秀な人材を囲い込む狙いがある。

 トヨタ自動車は11月半ばまで、IT企業が集まる六本木ヒルズ近くなどに求人広告を出した。今もホームページで「クルマは関係ないと思っていたあなた、TOYOTAへようこそ。」などと、大々的に人材を募集する。自動運転の開発競争が進み、AIや画像認識などの専門家が不可欠になっているからだ。

 ユニクロを展開するファーストリテイリングも、来店者の動きなど「ビッグデータ」から消費者の好みを分析するため、IT人材の中途採用を強化している。

 専門家からは「大手銀行などが、今まで見向きもしなかったようなネット系企業のIT技術者をどんどん採用している」と驚きの声が上がる。

 転職支援サービス大手「リクルートキャリア」によると、IT技術者は、1人の転職希望者に対する求人数を示す「転職求人倍率」が、5年前の約2倍から直近は約4倍となった。全体平均は1・9倍と人手不足の傾向にあるが、IT技術者の人材難は際立っている。

IT技術者の中途求人は年々増えている

 政府は、あらゆるモノをネットにつなぎ、そこから得られたデータをAIで分析して企業の生産性を高める成長戦略を掲げるが、実現の足かせになりかねない状況だ。あるIT企業の幹部は「ここ数年、『IT人材の育成が必要だ』と叫ばれ続けてきたが、対策はほとんど進んでいない。このままでは海外の拠点で現地の技術者を採用せざるを得ない」と警鐘を鳴らす。

育成 年単位の時間 給与・やりがい 魅力向上が鍵

 政府や教育機関も人材の育成や確保に乗り出している。政府は2018年4月から、国が指定するIT講座の受講者に最大で年56万円を給付する制度を本格的に始める。社会人にITを学び直してもらい、即戦力にする狙いだ。17年4月には、IT分野などで高い技術力を持つ外国人が永住しやすいように、永住許可申請に必要な在留期間を5年から最短1年に短縮した。

 大学でもデータ分析などIT分野を専門的に学べる学部などを新設する動きが相次ぐ。滋賀大学は17年4月にデータサイエンス学部を新設したほか、18年4月には横浜市立大学や広島大学も同様の学部を新設する予定だ。2020年度からは、小学校でプログラミング教育を導入し、「将来のIT人材」の育成が本格化する。

 人材育成は容易ではない。「一人前になるには数年単位の時間がかかる」(関係者)とされる。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で人材育成に携わる平山利幸調査役は「大学教育を抜本的に見直し、文系学生も含めてコンピューター科学を学ぶ体制にする必要がある」と指摘する。

 IT人材の問題に詳しい前川徹・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター所長は「給与を高くして魅力ある職業にすれば、短期的にも人材は集まる」と指摘する。「IT人材白書」によると、プログラマーの平均年収は、米国では約8万4000ドル(約950万円)だが、日本は約400万円にとどまっている。待遇に不満を感じてIT業界を離れる若者も多く、待遇改善は急務になっている。

 あるIT技術者は「(大手システム開発会社を頂点とする)下請け構造の末端では、やりがいをなくして辞めていく若い技術者も多い。人材を増やすのも大事だが、辞める人を減らす取り組みも必要だ」と話す。多くの企業の経営者も、IT人材をいかに引き寄せて経営改革を進められるかが問われている。

パソコンに向かい、仕事をする人たち(都内のヤフー本社で)

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INFORMATION

 IT人材のニーズは高まるばかりのようですね。3月17日の読売新聞夕刊の第2社会面には「サイバー防衛 社員の手で」という記事が載っています。国内の企業を狙ったサイバー攻撃に対処できる専門家を育てる取り組みを紹介。ぜひこちらの記事も近くの図書館などで読んでみてください!

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