【読売新聞コラボ企画|新聞で「社会」を知ろう】
『生きる語る』届けシリア 支援の音色

2018/06/27
社会を知る

「いつか内戦の終わったシリアを訪ねたい」。シリア支援活動を続ける山田一竹さん(東大駒場キャンパスで)=池谷美帆撮影

 内戦が続く中東のシリア。単純に「危険」と思う人もいるかもしれません。しかし、ここにシリアの人々の支援に立ち上がった若者がいます。2018年5月21日に読売新聞東京本社版の朝刊社会面に掲載された話題をお届けします。

 「シリア内戦は8年目に入り、いまこの瞬間にも殺りくと破壊が行われている。遠い国の出来事と感じるかもしれないが、そういう状況を前に何もしない選択肢はない。日本でできることはないのか。そこから考えていきたい」

 山田一竹(いっちく)さん(24)は、約200人の聴衆に呼びかけた。4月19日夜、広島市のゲバントホール。ピアノの弾き語りで、シリアの現状を訴えているシリア出身のパレスチナ人ピアニスト、エイハム・アハマドさん(30)をドイツから呼び寄せ、初来日公演を実現させた。

 それが、自分たちでできることの一歩だった。

地図

 紛争のことをずっと考えてきた。東大大学院でジェノサイド(集団抹殺)を研究しながら、非営利団体「スタンド・ウィズ・シリア・ジャパン」(東京都目黒区)の代表としてシリア支援活動をしている。

 きっかけは高校時代のフランス留学だった。

 「触れたことのない異文化の世界にあえて身を置きたいと思い立ち、高校2年の1年間、パリの私立高校に留学しました。その時に出会い、親友になったのがシリア人でした」

 留学中の2011年3月、東日本大震災が発生した。その頃からシリアでは内戦の端緒となるデモが激化していく。震災の惨状を伝えるテレビは、シリアの若者たちが自由を求めて立ち上がる姿も映し出していた。

 帰国後、立教大に進んで紛争を研究し、在学中にロンドンに半年ほど留学した。その時、難民支援団体の活動に参加し、シリア難民の身の回りの相談や英語指導などを担当した。「活動を通じて、目の前で家族を皆殺しにされたり、空爆で大切な人を失ったりした話を聞くうちに、何かしなくてはという気持ちが強くなった」

「日本で弾いて」 難民の公演実現

 アハマドさんを知ったのは15年11月、インターネットの動画だった。イスラエル建国時の混乱でパレスチナからシリアに逃れた祖父を持つ難民3世。首都ダマスカス郊外の難民キャンプで育ち、音楽家の父の影響を受け、ピアノを習得した。

シリアで子どもたちと一緒にピアノの弾き語りをしていた頃のアハマドさん(アハマドさん/スタンド・ウィズ・シリア・ジャパン提供)

シリアで子どもたちと一緒にピアノの弾き語りをしていた頃のアハマドさん(アハマドさん/スタンド・ウィズ・シリア・ジャパン提供)

 アハマドさんはドイツにいた。難民キャンプは15年4月にイスラム過激派組織「イスラム国」に制圧され、ピアノは燃やされた。ドイツに逃れたアハマドさんは、シリアの現状を訴えるために演奏会を開くようになった。その動画がネット上で広がり、共感の輪が広がっていた。

 「日本で弾いてほしい」とアハマドさんに連絡した。最初は笑い飛ばされた。難民認定申請中でパスポートもない上に、アハマドさん自身、「いくら演奏しても爆撃は止められない」という無力感にさいなまれていたからだ。「力になりたい」と何度も電話をかけて説得し、難民認定を待って、2年半がかりでこぎつけた来日公演だった。

「内戦の現実 絶望せず伝えたい」

 広島公演は、東京でのシンポジウムと演奏会に続いて開かれた。最初の曲目に選んだのは、シリアの友人が書いた詩にアハマドさんが曲をつけたものだった。妊娠していた友人の妻は、内戦激化により設けられた検問所に12時間留め置かれ、母子ともに亡くなった。

 原爆を落とされた地で、シリアの人々の痛みがピアノの調べに乗って染みわたっていく。この日8曲を演奏した。終演後、「心の叫びを感じた」といった感想が寄せられた。

 「活動してきても命が奪われる状況は変わっていない。でも絶望しても始まらない。演奏会では多くの人がシリアの痛みを共有した。何度でも何度でも、この現実を伝えていきたい」(山口優夢)

INFORMATION

 今回の話題は、読売新聞東京本社版の朝刊社会面で、2013年から続いているルポ「生きる語る」に載った記事です。自らの人生を力強く歩む人たちの姿に迫り、主に日曜日に掲載されています。ぜひ近くの図書館などで読んでみてください!

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